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大阪地方裁判所 昭和59年(わ)4088号 判決

主文

被告人を懲役三年に処する。

未決勾留日数中六〇日を右刑に算入する。

押収してあるドライバー一本(昭和五九年押第八六五号の1)、小型バール一本(同押号の2)、ガラス切り一本(同押号の3)、アイスピック一本(同押号の4)及び懐中電燈(電池二個付)一個(同押号の5)を没収する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、

第一(一)昭和四八年九月二〇日大垣簡易裁判所において窃盗罪により懲役二年に処せられ(同年一〇月五日確定)て昭和五〇年八月二五日右刑の執行を受け終り、(二)昭和五一年六月一八日大津地方裁判所において窃盗罪等により懲役二年に処せられ(同月二三日確定)て昭和五三年九月七日右刑の執行を受け終り、(三)昭和五四年四月四日神戸地方裁判所明石支部において常習累犯窃盗罪により懲役二年六月に処せられ(同月一九日確定)て昭和五六年七月三一日右刑の執行を受け終り、(四)その後犯した常習累犯窃盗罪により昭和五七年四月二一日神戸地方裁判所姫路支部において懲役二年六月に処せられ(同年五月七日確定)て昭和五九年七月二三日右刑の執行を受け終つたものであるが、更に常習として、別紙窃盗犯罪一覧表記載のとおり、昭和五九年八月三一日から同年九月六日までの間、九回にわたり、兵庫県神戸市中央区北長狭通二丁目九番一〇号割烹「ゆき」店ほか八か所において、高田幸子ほか一一名所有にかかる現金合計約二一万円及びトランジスターラジオ一台ほか八二点(時価合計七万二三四〇円相当)を窃取した

第二正当な理由がないのに(他人の住居等に侵入のうえ財物を窃取する目的をもつて)、昭和五九年九月一〇日午前二時一六分ころ、大阪市南区難波千日前一番二二号日宝河原町会館前路上において、他人の邸宅または建物に侵入するのに使用されるようなドライバー一本(昭和五九年押第八六五号の1)、小型バール一本(同押号の2)、アイスピック一本(同押号の3)、ガラス切り一本(同押号の4)及び懐中電燈一個(同押号の5)をショルダーバッグに隠して携帯していた

ものである。

(証拠の標目)〈省略〉

(累犯加重の原因となる前科)

前掲罪となるべき事実中に記載の(三)と(四)の前科関係のとおりであつて、これは、前記前科調書のほか被告人に対する昭和五四年四月四日付判決謄本及び前記調書判決謄本によつて認める。(法令の適用)

被告人の判示第一、二の各所為は包括して盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律三条(二条)に該当するところ、被告人には前示累犯前科があるので刑法五九条、五六条一項、五七条により同法一四条の制限内で三犯の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役三年に処し、刑法二一条により未決勾留日数中六〇日を右刑に算入し、押収してある主文掲記の各物件は判示犯罪行為(但し、判示第二の行為)を組成した物で、被告人以外の者の所有に属しないから刑法一九条一項一号、二項本文によりこれらを没収し、訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項但書を適用してこれを被告人に負担させないこととする。

(被告人に対し懲役刑のみを科した理由)

検察官は、本件は盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律三条(二条)の常習累犯窃盗罪(判示第一の罪)と軽犯罪法一条三号の侵入具携帯罪(判示第二の罪)の併合罪であるとし、被告人に対し懲役刑と拘留刑を科すべき旨(求刑・懲役四年及び拘留二九日)主張する。しかしながら、盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律三条の常習累犯窃盗罪の立法趣旨に照らし、犯人が一〇年以内に三回以上、窃盗罪等同種前科の刑執行を受け終つているにも拘らず、更に常習として、数個の窃盗(又は同未遂)罪と窃盗目的の住居侵入罪を犯した場合、この住居侵入罪は右数個の窃盗罪とともに包括して一個の常習累犯窃盗罪のみを構成するものと解するのが相当というべく、さらに、軽犯罪法一条三号の侵入具携帯罪の立法趣旨は、当該侵入具携帯の行為が住居侵入・窃盗罪等のより重い犯罪に至る危険ありとして、その危険が未だ潜在的状態である間に阻止することを専ら目的とするものであつて、右侵入具携帯罪は住居侵入罪が成立するときはこれに吸収されるべき性質のものと考えられ、本件においては、被告人が判示第一の各窃盗行為とともに、住居侵入・窃盗の目的で判示第二の侵入具携帯行為をしたものであるところ、以上の点を考合すれば、判示第二の侵入具携帯の行為は判示第一の各窃盗行為とともに包括して盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律三条(二条)該当の常習累犯窃盗一罪を構成し、別罪として軽犯罪法一条三号の侵入具携帯罪を構成しないものと解するのが筋合である。従つて、検察官の右主張は採用できず、被告人に対しては懲役刑のみを科することとしたものである。

よつて、主文のとおり判決する。

(谷口彰)

(別紙) 窃盗犯罪一覧表〈省略〉

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